ココロとカラダ

未知から既知への変化がもたらすもの。

「人間にとって、未知とは恐怖である。」

……確かにそうだとも言えますね。

例えば”行ったことがないところに行く”というのは、大なり小なり緊張が伴うものです。演奏する人にとっては、初めて行くコンサートホールやライブ会場というのは、独特の緊張感があるもの。

しかし、2度目3度目ともなれば、そういった「未知なるものに触れる」という恐怖は跡形もなく消え去り、逆に「ホールを味方につける」という意識も自然と生まれて、自分のパフォーマンスを最大限に発揮することにつながりやすくなるものでもあります。

今回はそんな「未知を既知にする」ということがもたらす大きな恩恵について。

 

————————-



先日、名古屋市内で開催された「アイリス・クラリネット・フェスティバル」にお招きいただきました。

こちらは東海地方を中心に活躍されている「アイリス・クラリネット・カルテット」さんの主催で、2日間にわたりクラリネットの様々な編成によるコンサートや、公開レッスン、各メーカーさんによるブース展示や、様々な小物、オリジナルグッズの販売などなど盛りだくさんの内容で開催された、まさに「クラリネットのお祭り」。

これらを全て女性奏者4名で(しかも演奏や司会もしながら!)切り盛りしているとは……恐れ入りました……(*_*)

さて、私はその中のイベントの一つ「クラリネットの為のアレクサンダー・テクニーク」の講師を仰せつかりました。



内容は、ステージ上で実際にクラリネット奏者の方々にアレクサンダー・テクニークのミニ個人レッスンを行なうというもの。

……ステージ上でレッスンをするというのは何とも珍しいことですが、非常に大きなメリットがあります。

まずは、実際のステージであるため、本番の時のご自分の様子が再現しやすいこと。
ステージ上で、そして客席にお客様がいらっしゃる状態でのレッスンは、とてもリアリティがあるものです。

まさに「本番」の状態で、いかに実力を発揮するか。

演奏家にとってこの大きな命題に迫ることができるのです。実際、多くの受講者の方がこの本番のステージにまつわる課題をお持ちでした。

そしてもう一つ。
実際のコンサートホールのため、レッスン中の音色や響きの変化が非常に顕著で分かりやすいということが挙げられます。

アレクサンダー・テクニークのレッスンでの音の変化というのは、受講者ご自身もさることながら、教師やレッスンを見学している方にとって、そのレッスン内での教師の提案がどういった効果をもたらすのかについて非常に重要な指針となるものですが、その変化が客席にいらっしゃる皆様にかなり明確に伝わるようでした。(聞きたかった笑)

確かにステージ上でもその変化は普通のお部屋とは異なり、特に残響の長さに大きく影響を及ぼすように思いました。



当日は6名の方にステージに上がっていただきましたが、その中で「本番での”感覚の違い”」について一人の奏者の方からご相談をいただきました。

とても印象的な出来事でしたので、書き残しておきたいと思います。

ここでの”感覚の違い”というのは、アンブシュアの感覚やリードの感覚(抵抗感など)、また楽器を持つ手の感覚のことを指します。これらの皮膚感覚、あるいは筋感覚が練習の時とは違うものになってしまい、それ自体に戸惑って悪循環を産んでしまう、なぜこうなってしまうのか…とのことでした。

まずは少し音階などを吹いていただきます。

「今も、その本番の感覚と似ていますか?」
「同じですね。持ってる感覚がない、というか。」

私は、本番ではアドレナリンなど興奮物質の分泌による作用で、感覚がいつもより敏感になることをお伝えしました。

(こちらご参考ください)

そして、感覚がより鋭敏になることは正常な現象かつ、本番であらゆる情報をキャッチし、その上で実力を発揮するためには必要不可欠な現象であり、次にその感覚が来たら「今日もありがとう!」と(嘘でもいいから笑)大歓迎&大感謝してみませんか?とお伝えしたところ、「そういうことだったんですね……」とおっしゃると同時にその方の全身が大きく柔らかく動き始めたのでした。

「もしよかったら、今この『本番の準備ができた』状態で、何かお好きなフレーズを吹いてみませんか?」

私はそうお誘いしてみました。

彼女は少し考えて、ベートーヴェンの有名なあるフレーズを演奏してくださいました。




……当日、会場にいらしたどなたか!
このレッスンを録音or録画をされていたらこっそり私に送ってください(懇願)!!

素晴らしい演奏を真近で聴かせていただきました。
もちろん音階の時から素晴らしい音でしたが、楽器を変えたのか、またはマイクを通してエフェクトをかけたのかと思うほどの変化でした。

…あぁ、もっと聞きたかった(笑)。

ありがとうございました。

未知から既知への変化。
「得体の知れないもの」が「自分にとって正常で必要なもの」へと変化し、受け入れ、心と体の両方が納得し安心した上での大きな変化の瞬間でした。

それにしても、受講してくださった皆様には本当に大きな拍手と感謝です。
当日、参加者の方の中から受講したい方を募るというものでしたが、ステージ上で突然レッスンを受ける、しかも自分の課題や悩みをステージ上で、そしてお客様の前で、いわば「明るみにする」ということに、どんなに大きな勇気と覚悟が必要だったことでしょう。

それだけ、クラリネットと音楽への情熱が深いということですね。

私のほうが大いに学ばせていただきました。

受講いただきました皆様、そしてサクソフォン奏者である私を講師としてお招きいただきましたアイリス・クラリネット・カルテットの皆様に、改めまして感謝申し上げます。

アイリス・クラリネット・カルテットの皆様と。

 

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