ココロとカラダ

「緊張」はなぜ起こるか?〜脳からの贈り物〜

「本番でも緊張しないようにしたいんです。いつも通りに演奏したい。」

生徒さんから、よくこのような相談を受けます。
演奏者をはじめとしたパフォーマーにとって、永遠の憧れとも言えますね。

…永遠の憧れ。

そう、それはきっと「永遠の憧れ」のままであり続けるのだと思います。

なぜなら「緊張」した時に起こる様々な現象は全て、本番で実力(あるいはそれ以上のもの)を発揮するために必要不可欠なことだから。

「緊張」した時に何が起こるか?

さて、緊張した時に何が起こるでしょうか?

何が起こると、あるいは感じると「自分は緊張している」と認識しているのでしょう?

これにはかなり個人差があると思いますが、概ね以下のようなものでしょうか。

・心臓がドキドキする
・口が渇く
・気持ち悪くなる
・手汗をかく
・手足や口が震える
・距離感や皮膚感覚など、感覚がいつもと変わる
・落ち着かず、ソワソワする

・・・などなど。

「あるあるーー」という声が聞こえてきそうですね。

ではこういったことが起こると、演奏者の思考はどうなるでしょうか。

「息が吸えない!吐けない!」
「声が出しづらい!口の中のコントロールができない!」
「リードが乾いて望んだ音が出ない!(木管楽器)」
「汗で楽器が滑る!指が滑る!転ぶ!」
「震えで指が回らない!音が揺れる!」
「いろんなことが気になって演奏に集中できない!」
「練習してきた通りのことができない!」

・・・枚挙にいとまがありませんね。

そしてそれによりどんどん不安や恐怖が増し、

「こんなに緊張してたらダメだ!」
「この緊張、おさまってーー!お願い!!」
「これ以上緊張しないようにしなきゃ!」
「いつも通り!いつも通り!大したことない!」

・・・と緊張を抑え込みにかかろうとします。

そしてそれは無駄な抵抗、あるいは逆効果に終わることは、多くの演奏者がご存知のことと思います。

 

「緊張」で起こることの意味・理由

本番、あるいは自分にとって大切な場面が近づくと、脳からアドレナリンをはじめとする興奮物質が分泌されます。(逆にそういう場面が近づかなければ分泌されません。…うまくできていますね)

それらが前述した様々な現象を引き起こすのですが、それには全て意味があります。ざっと挙げてみます。
(全て個人差があります。)

・心臓がドキドキする
→いつもより力を発揮するため=筋肉活動を活発にするために、心臓が働き始めます。

・口が渇く、気持ち悪くなる
→唾液や胃液は食べ物の消化活動に必要なものです。本番時は消化活動でなく、思考や身体の活動のほうにエネルギーを必要とするので、それらの分泌が抑えられるそうです。

・手汗をかく
→興奮物質が分泌されると、手のひら(足の裏)の汗腺が開きます。これはかつて人間の進化の過程において、外敵と戦ったり逃げたりする場合に木や岩に登りやすいようにするためだったと言われています。それが私たちの遺伝子に残っているものと思われます。

・手足や口が震える、距離感や皮膚感覚など、感覚がいつもと変わる
→興奮物質が分泌されると、感覚が大変鋭敏になります。本番時にはいつもより細やかに情報をキャッチし、物事に俊敏に反応できるようにするためとも考えられますね。

・落ち着かず、ソワソワする
→文字どおり、興奮状態にあるのです。ワクワクとも近いと言えますね。

…このように、これらの現象は全て、私たちがかけがえのない「本番」という時間に実力を発揮するために起こるべくして起こっている望ましいものなのです。

 

脳からの贈り物

「納得できない!」という声もあるでしょう。
でも、本当にそうなのです。

私たちに必要なのは、この「緊張」で起こる現象を乗りこなし、使いこなすことなのです。

これらの現象が起こった時、前述のように

「緊張を抑えなければ!」
「落ち着かなければ!」

と思うことで、逆に興奮物質はさらに分泌されることになります。

脳は正しく興奮物質を分泌しているのに、「これは間違っている!」と感じることで「→(分泌が)まだ足りない?→もっと必要?」と判断し、さらに興奮物質を分泌し始めます。

興奮物質が多量に分泌されすぎると、やがてそれを処理する許容量を超えてしまい、ついには

「コントロール不能」

の状態に陥るのです。

……。

身に迫りますね…。

ともあれ、このように「緊張」で起こる様々なことは全て、

本番で実力を発揮するために必要なことと理解し、

かけがえのない本番にしか起こらない「脳からの贈り物」と捉えることで、

これもまたどなたも体験したことがあるであろう「良い緊張状態=ワクワクの興奮状態」に自分自身を向かわせることができるのだと思います。

次回の本番でこれらの現象が起こった時、フリでもいいので(笑)両手を広げてその現象を歓迎してみませんか?

演奏をはじめとするパフォーマンスをされる皆さんが、より楽しく幸せな本番の時間が過ごせますように。

 

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