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「リハーサルまでは上手くいってたんです。納得するまで練習もできました。…でも本番ですごく緊張してパニックになってしまって…。」

演奏をする方なら、どなたにでもそのような経験があるのではないでしょうか?

今回はそんな「本番」に備えた練習について。

レッスンでお伝えした、ひとつの提案です。

お客様の「目」。

本番まで、私たちはたくさん練習をすると思います。

自分の納得する演奏に少しでも近づくため、そして本番でどんなに緊張してもある程度自動的に演奏できるよう、心も体もできるかぎりの準備をして本番に臨んでいると思います。

「…でもなぜか本番では、練習で感じたことのない”緊張”をして、思ったような演奏が全然できなかったんです。」

その時の緊張が少し蘇っているようで、しきりに手汗を拭いながらお話をしてくださいました。

「分かります…。その時どんなことを考えていたか、どんな心模様だったか、覚えていますか?」

「うーん。。。お客さんの目が怖くて見られなくて。ちょっといつもより譜面台を高めにして、バリケードみたいにしてました(笑)。何も攻撃されるわけじゃないんですけどね。」

ご自分のことを冷静に振り返ることができているようで、ちょっと表情も緩んできました。
(こんな風に当時のことを振り返って、自分の観察をすることもとても大切な事だと思います。)

より良い演奏のために、緊張は欠かせません。それは、この生徒さんもこれまでのレッスンでよく理解されていました。 (参考:過去ブログ「緊張」はなぜ起こるか?)

「”緊張”について分かっていながらも、うまく乗りこなせなかったのが悔しくって。」

そんな生徒さんに、一人での練習でも使えるようなひとつの提案をしてみました。
 

「お客様」を練習室へ招き入れる。


その時レッスン室にあった、ありったけの「目鼻のついた人形やぬいぐるみ、イラスト」をお客様に見立てて並べます。

 
(写真はイメージです。。。)

「この前で演奏してみましょうか。」

本番さながらに、ステージへ出てくるところからお辞儀も含めて演奏していただきました。

「うわー!コレ結構きますねー!本番、こんな感じでした!」

録音やイメージトレーニングなど「本番のための練習」はいろいろあると思います。

でもこのように「見られる」練習はなかなか一人ではできないもの。

この練習の様子を誰かに見られたらちょっと面白い光景ですが(笑)、意外と効果はあるようです。

「このお人形たちの眼差しを「怖いもの」と見るか、「聞いてくれている」と見るかは、演奏している人の「解釈」になると思います。「見られている」ことは変えられませんが、その”解釈” は変えていけるかもしれませんね。」

「”解釈”か・・・。なるほど。もう一度やってみたいです。」

ここでより自由に演奏ができるために『頭が動けて、身体全体がついてくるように』アレクサンダー・テクニークを意識的に使いながら、もう一度演奏していただきました。

この時の演奏の変化は、ちょっと表現が難しいくらいとても華やかなもので、私も人形に混ざって聞かせていただくことにしました(笑)。

「あー、こうやってできたら良かったのに!」

ちょっと悔しそうな生徒さんなのでした。  

本番のための練習。


この試みは、ほんのひとつの「ある提案」に過ぎません。

しかしながら、私たちは普段の練習の中でこのように「本番のための意識的な練習」をどれくらいしているでしょうか?

「楽器」「演奏者」「作品」とともに、「会場のお客様」も本番が成り立つために大切な、大きな役割。

一人で練習するときも、お客様の存在について意識的でありたいものですね。
 

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