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「1人で練習してる時はできることが、合奏になるとできなくなるんです…。」

とある音楽大学でトランペットを学ぶ生徒さん。

その日はグループレッスンだったので「私もー!」と次々と声が上がります。

こういった複数の人々が絡む状況でのお悩みを扱うとき、グループレッスンはとても大きな効果を発揮します。

今回はそんな「1人のときと合奏のときの違い」について考えてみます。  

 

自分の変化を観察する。

まずは1人で吹いていただき、そのあとに合奏の形になってもう一度吹いていただき、そのときのご自分の変化について観察していただくことにしました。

このようなロールプレイは、あくまでもお芝居というかいわゆる「疑似体験」にはなってしまいますが、意外と変化が現れるものです。

・・・

1人で演奏するときは、とても伸びやかで、体もよく動いているように見えます。

たまたま有名なフレーズでしたので、全員でTuttiで演奏していただきます。

・・・

合奏の形になった段階で、座り方が少し変化しています。背筋を少し伸ばし、胸をはるような動きをすることで少し腕を後ろに引いています。視線が楽譜に集中し、あえて他のものを見ないような…そんな動きも見られます。

「どうでしたか?何かご自分で気づいたことはありますか?」

「…何となく背中が張る感じと、マウスピースがうまく当たらないというか、密着してない感じがして吹きにくかったですね。”1人のときと同じように吹けばいい”と言い聞かせてたんですけど、うまくいかなかったです。」  

 

情報を受け止めきる。五感をひらく。

背中が張るのは背筋を伸ばしているからで、マウスピースがうまく密着しないのは腕の使い方の変化から起こることでしょう。…とてもよく観察できています。

私が気になったのは”1人のときと同じように吹けばいい”という発言でした。

「1人のときと、合奏の状況と、同じ状況でしょうかね?」

「え?いえ、全然違います!だから自分に集中しなきゃと思って。」

そう、状況は明らかに違うのです。

1人のときよりも、合奏のときは、その規模にもよりますが外部から入ってくる情報(聴覚的なものだけでなく、視覚的にも、皮膚感覚的にも。)は100倍以上増えるものと思われます。

それほど外部の状況は変化しているのに、”1人のときと同じように”と自分の身体にオーダーを出すと、身体は混乱します。

人間は、環境に適応して自分を調整していく動物です。

合奏では、まさにそういった要素がとても必要になってきます。

周囲の音を聞くことで音程を合わせ、音量や響きを整えていく。
指揮者を見るだけでなく、周囲も視界に入れることでタイミングを合わせていく。

五感をひらき、入ってくるすべての情報を受け止めまくって演奏してみませんか? そんなアドバイスをしてみました。  

 

1人のときにできること。

「うーん。。納得はできます。ちょっと怖いけど、やってみます。」

それに加え、合奏のときも背筋は緩やかに動き続けること。胸も呼吸とともに動き続けることを言葉と手でガイドしながら、もう一度合奏の形で演奏していただきました。

・・・

「あぁ、なんだか”見ないように、周りを聞きすぎないように”って思ってたみたいです。今やっと気づきました。・・・1人で吹いてたときよりも、吹きやすかった。」

(他の生徒さん)「私もなぜか吹きやすかったです…。私も同じの、やってみてもいいですか?(笑)」

結局、全員が同じことを試してみたのでした(笑)。   

 

「現実と異なること」をオーダーすると、身体はその本来の能力や役割を発揮してくれなくなります。

骨格や筋肉、体の動きを学ぶことが有効なのは、そういった理由もあります。

1人で練習するときも、スコアリーディングなどしながら他にどんな音が聞こえてくるか、どんな響きの中に自分の音が存在するかをイメージして演奏してみると、合奏になった時もより適応しやすいかもしれませんね。

そんなお話をして、レッスンを終えました。  

 

さて、グループレッスンの良いところは、こんな風に悩みを共有したり、「仕方のないこと」と自らフタをしていたことに気づけるところです。

知らない方とレッスンを受けるのは抵抗があるものですが、ぜひ一度参加してみてくださいね。
<セルフ・クエスト・ラボ プラクティカル・クラス(グループレッスン)>  

 

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