「鼻抜け」を考える。
一部の管楽器奏者を悩ませる「鼻抜け」。
楽器を吹いていると、鼻から空気が抜けてしまって演奏が一時的にほぼ不能になってしまう現象です。
症状にはかなり個人差があり、ここで全てスッキリ解決できるとは決して言えませんが、鼻抜けでお悩みの方の一助になれば幸いです。
鼻咽腔閉鎖機能について。
私たちの身体には「鼻咽腔閉鎖機能」というものが備わっています。
鼻咽腔閉鎖機能とは、飲食物を摂取したり、発声をしたり、楽器を吹いたりした時、呼気(吐き出される空気)や食物が鼻に抜けないように、軟口蓋(上顎の奥の軟らかいところ)などで蓋をする機能のことです。
「鼻抜け」は、この鼻咽腔閉鎖という状態が保てなくなるためにおこるものです。
最初に起こったときのキッカケとして、
・極度の緊張や疲労、体調不良
・無理のある吹き方(喉や口の中を大きく広げようとしすぎる)や重すぎる、または軽すぎるセッティング
…などが挙げられますが、一度経験してしまうとそれが恐怖となり、「息が漏れないように」と意識するあまりさらにこの軟口蓋あたりを硬直させてしまって「鼻抜け」が悪化していくパターンが多いのではないかと思います。
少し機械的な表現をすると「ショートを起こしている」という感じでしょうか。
…私も、過去に一度だけ「鼻抜け」を経験したことがあります。(幸いなことに演奏不能までには至りませんでしたが。)
たった一度だけの、それも随分と昔の出来事にも関わらず、
「また起こったらどうしよう」
「途中で吹けなくなったらどうしよう」
という恐怖から逃れることは、なかなか難しいものでした。
しかし、アレクサンダー・テクニークに出会い、学んでいくうちに徐々にその恐怖は薄れていきました。
身体で起こる”事実”を見つめ、絡まっていた思考をほどく。
同じような症状を訴える生徒さんに対して、私がアドバイスしたことで実際に効果があったものは主に以下のとおりです。
・「恐い」という感情がやってきた時に、アレクサンダー・テクニークを使ってみる。「頭が自由に動けて、身体全体がそれについていく」ことを思い出す。
(※こちらのブログもぜひご参照ください。
「頭と脊椎の優しい関係 その1」
「頭と脊椎の優しい関係 その2」 )
・息は肺から”上へ”向かう。結果的に口の硬い天井(硬口蓋)にぶつかりながら上の前歯のウラに当たって楽器へ入っていく。
・口の中や喉は無理に広げていなくてもいい。
・舌も全体に上に上がっていていい。少し前の方にいてもいい。
・鼻と喉の間あたり(軟口蓋。上の画像参照。)は、少し隙間があるくらいでも大丈夫。
・足首、膝、股関節も固めず動けるように。そして腕も鎖骨と肩甲骨から自由に動ける。自分の身体全体がそれぞれ楽器を吹くことに協力していることを思い出す。
これらはすべて、身体で起こっている「事実」に基づいています。
事実を見つめ、もう一度新しく考え、絡まっていた思考をほどいていくことで結果的に、「ショート」を起こしている身体にも少しずつ変化があらわれることと思います。
同じお悩みをお持ちのみなさま、ぜひ一度お試しください。
…今後も少しずつ探求していきたいと思います。
注意※医学的には、先天的に異常がある場合を除き、この鼻咽腔閉鎖機能は自分の息の圧力くらいで保てなくなるようなものではないのだそうです。
もし突然この症状に見舞われた際には、一度必ず医療機関を受診してください。
(大変稀だとは思いますが、過去にそれをきっかけに大きな病気であることが判明した方がいらっしゃいました。)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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