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数か月ほど前から、指の不調を抱えた若いフルーティストさんがレッスンにいらっしゃっています。

「演奏しようとすると、指が(あるいは他の部分が)自分の思っていることと違う動きをする」・・・。

演奏者にとって、これほど恐ろしいことが他にあるでしょうか。

勇敢にもそんな自分の症状と真正面から向き合い、少しずつ改善への道を歩んでいる彼から、先日嬉しいメールをいただきました。

今回は、ご本人の許可を得て、その一部をシェアさせていただきます。

*****

“少し発見があり嬉しい気持ちなので報告させてください。笑

私は昔からフルートの構えは三点支持だ、と言われてきました。よくある唇、左手人差し指の付け根、右手親指で支える方法です。右手小指はキィの操作があるため支えにしてはいけない、と言われてきました。

昨日のレッスンでお話があった握る力の強い薬指と小指の話を思い出し、右手小指も支えに含む四点支持?みたいな感じで吹いてみました。すると、右手の普段気にしないところへ意識が行ったため左手への意識が消えたこともあるかと思いますが一番困難であったD→Cの運指にストレスがなく、楽器が転がることもなくスムーズに移行できました。小指キィの操作が必要な時は別の指で支えてあげれば良いと気づくこともできました。

この些細な発見に至るまでに、握るのが得意な指のこと、勝手にタブーを作ってしまう悪い癖のこと、人は常に動き続けていること、そして体の観察を常に続けること、と今まで教えていただいたことが自分の助けになりやっと1つの可能性を掴めた気がします。

右手小指も支えに使えば良い、と人から教わるのではなく、体の得意なこと、出来ることを知った上で試すのは同じ体の使い方でも全然違った使われ方をするような気がしました。
小指に頼らず、その運指に合わせた支え方、動きをこのまま研究していけたらと思います。

(中略)

(先生に)出会う前の私は絶望し、ただゆっくりから指を動かすことしか出来ず雲をつかむ作業でした。何か指針が決まりこのように考える力を与えてくださり本当に嬉しく思います。何故それをするのか、どうしてそれをするのか、これは姿勢以外にも沢山私に影響を与えてくれております。まだまだこれからの分際ではありますが、少しでも前進できたことに喜びを感じております。


また次回も宜しくお願い致します。”

*****

・・・この文章に、私は強く胸打たれました。

彼とのレッスンは私にとって、特に毎回毎回試行錯誤の連続です。

彼の動きや音や言葉、その全てから観察できることを一つずつ分析し、仮説を立て、細心の注意を払いつつ実験を繰り返す……お互い手探りでぐるぐるとしながらも、彼にとっての新しい選択肢を編み出すサポートを少しずつ少しずつ続けているところです。

そして彼はいつも、その一つ一つを丁寧に見つめ、受け容れ、実践し、しかしそれに依存しすぎることなく常に広い視野を持ち、自分自身の意志で選択することを繰り返すことで、日々どんどん前進されています。

その姿に、私の方がいつも学ばせてもらっています。
(同じ歳ぐらいの時の自分は、激しくちゃらんぽらんだったな…苦笑)

いつだったか、アレクサンダー・テクニークの恩師がこんなことを言っていました。

「教師には、何も教えることなどできないんだよ」

その時は「えええ・・・だったら意味ないじゃん・・・」とそのまま純粋無垢に(笑)受け止めていましたが、今ようやくこの言葉の意味が少し理解できた気がします。

教師の言葉をどう解釈し、どう自分自身に落とし込むか。

それはすべて、生徒さん自身の力であり。情熱の温度であり。

教師はただ、それを見守り、ともに立ち、寄り添うことしか結局はできないのですね。

 

また一つご褒美をいただいた気がしますが、私自身もそこに甘えることなく、またここから研鑽を積んでいきたいと思います。

 

(注:アレクサンダー・テクニークのレッスンはあくまでもレッスンであり、治療行為ではありません。体の動きに違和感を感じる方は、まずは必ずしかるべき医療機関で受診をされることを強くお薦めします。)

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