教えること

演奏における動き。その希望的考察。

「表現するときは、もっと動いたほうがいい。」
「無駄な動きは妨げになるので、一切やめるべき。」

演奏時の動きについては、様々な意見があります。

それらの意見に翻弄されてしまったことがある方も多いのではないでしょうか。

「どう動くのが、演奏にとって”正しい”のか…。そもそも動かない方がいいのか…。」

・・・今日はそんな演奏時の動きについて。  

 

どう動いているかを知る。

「今の動きは、良かったですか?何か悪いところはないですか?」

レッスンで、こんな質問を受けることがあります。

最初にお伝えしておきたいのは、「動きに、”良い”動きも、”悪い”動きも無い。」ということです。

動きは、どんな動きであってもただ“そう動いている”という現象が起きているだけです。

・・・・。

こうなると話が終わってしまうのですが、大きな前提として、動きを「良い」「悪い」で見ることから一旦離れたいのです。

ある動きに対して「この動きが良い!」となると、その動きだけを選択しようとし、「この動きは悪い!」となると”それをしないように”とする思考が働くものです。

演奏するにあたり、これはとても窮屈で不自由なものだと思うのです。

演奏時の動きは、実に人それぞれです。それは大切な個性です。

そして動きには全て、理由があります。

演奏時の動きについて考える時は、自分がその全身でただ「どう動いているのか」を、まずただ「知ること」が大切だと思っています。  

 

その動きは何をもたらすか。

一つの例として、あるサックス奏者の生徒さんとのレッスンでの出来事を。

それは高音から低音へ、かなり幅の広い跳躍をするフレーズでした。
跳躍する直前からその瞬間まで、様々な動きが起こっています。

全ては表現しきれませんが、指がキィを押さえるために指とともに腕が全体に大きく動き、アンブシュアと顎もある方向に動きつつ、楽器に対する頭の角度は頚椎とともに大きく前へ傾き、胴体は全体にかがむような、縮む動きになっていました。

…なかなか思ったとおりに音が移行してくれません。

そこでこの場合の跳躍において「何が起こる必要があるか」を考え、仮説を立てていきます。

・必要なキィを押さえる
・マウスピースとリードにかかる圧力を減らす
・息の量は増やす
・・・

それら必要条件において、どういった動きが可能であるかを考え、一つ一つ検証していきます。

その検証の過程の中で、あるいは望ましい結果にたどり着いた時、初めて自分が「選んでいた動き」を知る(気づく)ことになります。

この生徒さんは、その中でも特に「胴体をかがむように縮ませる動き」が低音へ移行することの妨げになることを発見されました。

「音符が下に下がるから、そんな動きをしていたのかなぁ…」  

 

ただ知る。そこから広がるもの。

必要なことと、それが起こるための動き。自分がこれまで選んでいた動きの理由。

それら全てを明らかにすることは難しいですが、それらを少しでも知ることで、動きに自由さが生まれてきます。

これからの練習に大きな可能性が広がり、奏法の創意工夫への道筋に明かりが灯り始めます。

そんな時の生徒さんの表情は、教師にとっても嬉しい報酬です。

「人は楽しい時に、身体がよく動くものよ。」

これは尊敬する恩師たちの、そのまた恩師の言葉だそうです。

「良い」「悪い」「正しい」「間違っている」という評価の前に、ただ「知る」ということ。

これらを指摘してしまう方が早いのは事実かもしれませんが、自分としては、こんな時間を大切にしていたいなぁと思っています。    

 

 

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