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 「もっと響かせたいんですが…」
「響かせるには、どうしたらいいんでしょうか?」

“響き”については、レッスンでもよく話題に上がります。

「もっと響かせて!」なんてついつい簡単に言ってしまいますが、この”響き”というものはなかなか言語化が難しく、それぞれの持つイメージにより様々な表現がなされています。・・・それゆえに、悩ましいものでもありますね。

ここでも少々感覚的な話になってしまいますが、今回はそんな「響き」についての一考察です。

 

響き。その謎多きもの。

学生の時、教授から伺った話でとても印象的だったものがあります。

「まだ経験が浅い人などはねぇ、楽器のベル(管楽器の先端の開いている部分)から直接音が出てるように聞こえるんだよ。それに対して上手い人っていうのは、その人全体から音が出てるもんなんだよ。不思議だけどなぁ。」

『ほぅ。。確かにそんな感じがする。。でもそれはどうすればできるんだろう?上手くなればそうなるのかな?それとも、そうしようとすれば響くようになるものなのかな?』

当時はそんな風に考えて、一生懸命”自分”を響かせようとしたものです。

それはそれで一定の効果があって、音色や響きのアイデアやコントロールのために随分と役立ってくれましたが、アレクサンダー・テクニークを学ぶことで、さらにそれらが少しずつ具体的に裏付けられていきました。  

 

響く身体。響く自分。

「響き」とは主に音が広く周囲に伝達することや反響、残響、また振動そのもののことを指します。

歌や楽器を演奏する場合、まず何が響くかというと「自分の身体そのもの」と「楽器」です。

そして、身体の何が響くのかというと一般的に「骨」および「骨で囲まれた空間」と言われています。


(画像:Visible Body)

「骨で囲まれた空間」というと頭蓋骨や肋骨で囲まれた胸腔、骨盤などが挙げられるでしょうか。
(これらは音の高さによってよく共鳴する場所が変わるそうですが…ここでは省きます。)

特に歌や管楽器など、頭部そのものや頭部に近いところに発振部を持つ場合は、頭蓋骨の中にある鼻腔や副鼻腔などの空間がよく響くと言われています。


(鼻腔って広いですね…。あと眉毛のあたりや頬骨のあたり、こめかみの高さにも空洞があります。)

このように全身の骨格や実際に響く場所についてイメージしながら、実際に音を出してみると、それだけで意外と大きな変化があるものです。
(響きの変化は自分だけで聞くより、どなたか第3者に聞いてもらう方が変化が分かりやすいかもしれません。)  

 

“自分”を拡張し、響きも拡張する。

そしてやはり「響くもの」と言えば楽器ですね。

人間は、道具を使うことでその道具を「自分の身体の一部」として認識することができます。

卓越したものになると、例えば書道家や画家の筆先とか、大型車のドライバーの車体感覚とか…まるで道具を自分の一部のように扱っていますね。

楽器を演奏する場合も、身体と共に「楽器の全体」も身体の一部として含めて考えることはよく言われています。

管楽器ならベルの先まで。トロンボーンならスライドの先のゴム(名前が分かりません…)とチューニングスライド。弦楽器なら渦巻きや弓の全体、ピアノならハンマーをはじめとして、ピアノ全体(フルコンだと大型車並ですね…)になるでしょうか。あ、パイプオルガンとか大変ですね(笑)。。

いずれにせよ、このように楽器全体も意識に入れてみるとまた変化があるのではないかと思います。

そして。

パイプオルガンからも連想されますが、演奏会の場合は「会場」も響きます。これも響きのための大きな要素となりますね。

会場の中にあるすべての空気、壁、床、客席、天井。すべてが響きます。 会場も楽器の一部であるとよく言われますが、ここで「会場も自分の一部」と考えることもできます。

素晴らしいホールで演奏する機会が日常である人は少ないと思いますが、ここで「あの大好きなホール」をイメージし、自分の一部として意識に入れて演奏してみると、また違った変化を得られるでしょう。

「ホールの一番後ろまで響かせる」というのは指導する上でよく聞く言葉ですが、 「ホールの全体の空気、壁、天井、床、客席、お客さん(←!)のすべてが自分と共に響く」 と考えてみるのも、また変化があると思います。

「意識するだけでなぜ変わるのか」について詳しいことは分かりませんが、意識の変化によって骨格を取り囲み動かしている”筋肉のハリ”が微妙に変化しているのだと思います。それにより、響きの伝達は変化するでしょう。

自分をどのように“拡張”していくか。

自然にできていることも多いかと思いますが、改めて音楽表現のパレットの一部に加えてみるのはいかがでしょうか。

 

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