ひたむきな眼差し。〜アルト・サックスでの座奏〜
最近、レッスンを受けにお越しくださる皆様の中で、
新幹線や飛行機でいらっしゃる方もすっかり珍しくなくなりました。
教師としては毎回毎回、襟を正し、背筋が伸びる思いです。(←あっ。。良い意味でです。)
もちろんお近くからいらっしゃる方々も、皆さんそれぞれにひたむきな眼差しを持った方ばかりです。
それぞれの目的・望みに近づくために、ご自分の心と身体に真摯に向き合う時間を共に過ごさせていただくということは、
とても貴重なことだと思う今日この頃です。
このブログに登場する方も、そんなひとりです。
限られた条件の中で、どう自由に構えるか。
ある年末のこと。
現在ある自衛隊の音楽隊でサックス奏者を務める後輩ちゃんがレッスンに来てくれました。
主なお題は「アルトでの座奏について」。
座って演奏する場合、アルトサックスはちょっと中途半端な大きさで、
男性にとっては概ね体の真ん中で構えることで問題ないのですが、
女性や子供さんにとっては体の真ん中で構えるか、横で構えるかがとても悩ましい問題になることがあります。
特に女性の場合は、本当は真ん中で構えたいところ、服装によっては横で構えないと……な場合もあります。
(「ズボン履けば…」って聞こえてきそうですが(´ Д ` )。。だってスカートも履きたいんですものー。)
彼女の場合は、いつも決められた衣装があり、
特にコンサートホールなどでの演奏ではややタイトめなロングスカートになるのだそうです。
…そうなると、足を開いて体の真ん中に楽器を構えることは難しくなります。
「いろいろ試してみたんですが、どうもしっくりこなくて…。そのうち左腕がしびれてきちゃったりします。」
座奏で吹いているところを見せてもらうと、脚を中心に全体がとても窮屈そうに見えました。
上体の自由さのために、股関節を活かしきる。
普段の座奏のときにどんなことを意識しているか聞いてみると、
「脚で体重を支えて重心を下に」とのこと。
椅子に座っているときは脚だけでなく、
坐骨(座っているときにお尻の下に手を敷いてみると、この骨が手に触れます。)が脚の代わりをして体重を支えてくれていること、
そのすぐ上にある股関節で上体をダイナミックに動かせることをお伝えして、
まずは楽器なしで座ってもらいました。
そこに楽器を持ってくると、どうしても胴体が右に傾くため、
体全体を正面に対して少し左向きに座ってもらい、
上体を股関節から少し前傾してからぐるりと動かして正面を向いてもらいました。
…そうすると、少し右側にスペースができるのでそこに楽器を持ってきます。
伸びやかに変化していく音。
「……あぁ、とても安定して吹きやすいです。股関節って、こんなに動けるんですね。左腕も、何ともないです。」
もともとのひたむきな眼差しが、とてもきらきらして見えました。
とても厳しい環境のなか、そして大きな制約の下、ひとつの任務として音楽をしていくということは、
なまぬるーい環境にいる私にはとても想像がつきませんが、
その変わらない眼差しに何だかとても安心し、そして大きな尊敬の念を覚えたのでした。
…どうか彼女がこの先も健康で、穏やかにお仕事ができますように。
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