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演奏中つい繰り広げてしまう「リアルタイム反省会」。

「あぁやっぱり上手くいかなかった。悔しい……。」
「え、いま何で間違えた?何が起こった?」
「今のとこ、もっと歌いたかったのに」
 ……。

そんなことの連鎖が、またさらなるミスを誘発してしまったり。

「もっと演奏に集中していたいんです。緊張すると、なぜかますます散漫になってしまって。」

レッスンで、そんなご相談をされることも多いものです。

今日はそんな演奏中のマインドセットについて。

 

本能システムを理解する

そもそも人間は本能的に、ここ一番という大切な時こそ「起こって欲しくないこと」や「失敗してしまったこと」を考えてしまいやすい生き物です。

そう、本能的に。

私たち人間は、失敗や危険を回避して生き延びてきた優秀な遺伝子を受け継いでいて、そしてそれは生存本能としていつも私たち自身を守ろうとしてくれていると考えています。

本番というものは、演奏やパフォーマンスをする人にとって非常に大切なシーンです。脳はそれをよく知っています。自分にとってそのような大切な場面こそ、よりそれらが働いて失敗や危険を回避してくれようとすることは、ある意味当然と言えるかもしれません。

「また集中できなかった……無駄なことを考えてしまった……」と自分を責めるのでなく、自分がそんなシステムを持っていて、それらがこのように正しく働いてくれていることをただ受け容れてみる。まずはそれだけでも、何らかの変化があることでしょう。


 

考えることを準備する

さて、自分に搭載されたシステムを理解した上で次に取り組みたいのは、あらためて「本番で考えたいこと、伝えたいことを準備しておく」ことです。

(『え、当然じゃん……』とガッカリした方もいらっしゃるかもしれません(笑)。
しかし、あらためて整理してみたいと思います。)


演奏するために考えたいことは、実にたくさんあるものです。

・作曲者の意図
・曲の持つストーリー
・作品が作られた背景
・作曲者自身のこと
・その時代の考証
・曲の形式
・調性や構成
・各声部の役割
・自分の表現したい世界観
・自分が伝えたいメッセージ
・自分の創造するストーリー
・それらをどんな音で
・どんな発音で
・どんな響きで
・どんなフレージングで
・それを実現するために身体をどう使うのか


……とても網羅しきれません。

当然これらは練習の中で探求されていくものですが、本番でサッと引き出せるようにするには、言語化や映像化するなど、自分の中でかなり明確にしておく必要があると思います。

そうしておくことで、本番で反省会を始めそうになることを未然に防いだり、たとえ始めてしまったとしても即座に「今、ここ」の演奏表現の中に戻れる可能性が高まるでしょう。

 

意識的コントロール

本番が近づき、仕上げの段階になってくるとどうしても「守り」に入ることも多くなると思います。(自分はそうです。)

『できるようになったものを劣化させずキープしたい。』
『成功確率を上げたい。』
『練習でやっているとおりにできるように。。。』

そんな”守りモード”に入ると、その時点で「リアルタイム反省会」に突入する確率も高くなります。(これはあくまでも自分の場合です。)

この時点でも、すでに膨大な量になっている引き出しの数を新しく増やし続け、あるいはすでにあるものを深め続け、またそれらを一旦捨てることも恐れずに、表現したいことのアップデートを意識的にし続けること。

そんなことを心掛けていると、きっと充実した本番の時間を過ごすことに繋がると思います。


私はアレクサンダー・テクニークを使うことで、身体の動きだけでなく、こういった「本番での思考の自由度」を上げることができるようになったと思っています。

「反省会」を繰り広げそうになる自分に素早く気付き、あらためて本来のやりたいことのために自分全体を向かわせる。

私たちは「何を考えるかを自分で選ぶことができる」はずです。
でも無意識なうちに私たちの優秀なシステムは時に過保護に働き、私たちを守ろうとしてくれます。

「考えることを自ら意識的に選ぶ。」

これは本番のたびに、ある意味”練習”できるものかもしれません。

しかし振り返ってみると、「上手くいった本番」ではどなたもこのようなことが起こっているものではないでしょうか?



……さて、本番を有意義なものにするためには、「その場(お客さま)とのコミュニケーション」も重要です。

これはまた、次の機会に。

 

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