演奏するための”姿勢バランス”と出会う。
実は小さい頃から、「身体の使い方」がとても苦手でした。
瓶のフタを開ける、自転車に乗る、口笛を吹く、何かを結ぶ、マット運動、高跳びや幅跳び……。
どれも上手にできなくて、成長とともにそれが強いコンプレックスになっていきました。
楽器においても、
ピアノではそれぞれの指に上手く力を伝えられず、高校生になってからハノン(音階練習の基礎)をやり直したり(コレは今でもとても役立っていますが)、
サックスでは、フラジオやスラップタンギングやベンドなど特に外から見えないところを使うことにおいて、どんなにやり方を詳しく聞いてもなかなか実践に繋がらなかったり。
「自分の身体をもっと上手く使えるようになれればなぁ……」
それはずっと長い長い間、私の”願望”でした。
プレイヤーとしてキャリアを積む中で「演奏する上でも教える上でも、もっと知識とスキルを上げて行きたい」と思い、その頃出会ったアレクサンダー・テクニークのレッスンを受けてみることにしました。
レッスン室には実物大の骨格模型が置いてあり(正直、引きました笑)、先生が丁寧に正確な
「頭の位置」や
「脊椎の長さ」
を教えてくださるのですが、その説明を聞いているだけで何だか気持ち良く身体が動き始めたことを覚えています。
(画像:Visible Body)
その後、先生が私の頭や胴体に触れて適切な「バランスのとれた姿勢」へと導いてくださったのですが……その触れ方が繊細すぎて繊細すぎて、私は激しくパニックに陥るのでした。
『???……いま何をされたのか全く分からない……どうしよう……どこをどう動かしてくれたの……?』
そんなパニック状態の中、先生に楽器を吹くように促されました。
『……これでは吹けない!!!』
直感的にそう思いました。
あまりにも「いつもと違う」バランスで立っていたからです。
でも楽器吹きに来たんだし……と思い直し、半信半疑でその時取り組んでいた曲を吹いてみました。
その時の驚くべき軽やかさは、今でも忘れません。
『あぁ、身体を上手に使うってこういうことなのかもしれない……自分にも少しはできるようになるんだろうか。』
その時のメモが残っていたので、ここにシェアしておきたいと思います。
・頭の位置と背骨の長さを知った。それを思い出すと自然に背筋が伸びる気がする。伸ばす、では無く。
・ストラップの位置も上がる。いつも縮めて吹いていたのか。
・先生に触れてもらうと、地に足が付いたような気がする。でも重心が下に、というのでもなく、上へ上へ伸びている感覚。
・体の境界線が無くなった気がした。輪郭が溶けるような。とにかく感じたことのない感覚で違和感しか無い。かなり前のめりな感じ。これは自分じゃない気すらする。
・それなのにアンブシュアが勝手に安定する。お腹も使いやすい。必要なだけの力を使うとはこのことか。しかしとにかく意味不明。自分では再現不可能な気しかしない。
(最後の方はずいぶんな言い草である……(笑)。)
そんなこんなでしばらく学んでみることにしたのですが、最初の頃は楽器を持ってレッスンに出かけるのが苦痛でした。(のちにその苦痛は定期的にやって来るのですが笑)
先生の説明や、先生の手が教えてくださる「動き」を適切に察知し理解することに、その時はとてもプレッシャーがあったのです。
それは私にとってまさしく「自分自身のまるごとと向き合うこと」だったのでしょう。
大人になってから、等身大の自分と向き合うのは、なかなか勇気のいることでした。
しかし、
骨格や筋肉のこと、そしてそれらの動きの構造を知り、理解していくこと。
そして思考と動きの関係性について理解していくこと。
これらを少しずつ深めていく過程で、前述の姿勢のバランスも含め、自分にはできないと諦めていたことがどんどんできるようになっていきました。(もちろんできないこともまだたくさんありますが。)
憧れだった「自分(の身体)を上手に使う」ことについては、どうやらゴールは無いようです(笑)。
しかし、コンプレックスだったことはいつの間にかすっかり薄れていき、身体を使うことについても大きな興味を持って取り組むことができるようになりました。
これは私の人生にとって、思わぬ収穫でした。
インターネットの普及により、「知ること」「情報を集めること」がとても容易い時代となりました。
そして同時に「実際に体験すること」がとても重要視される時代でもあります。
レッスンでどんな体験をされるかは、人それぞれです。こればかりは何も保証することはできません。
しかしどなたにとっても、新しい体験となると思います。
かつての自分のような方々とたくさん出会えることを、私はいつも楽しみにお待ちしています。
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