“指への指示”をアップデートする。
「指は”丸く”、とか”立てる”、ってよく言われるじゃないですか。理屈は分かるんですけど、なかなかできなくて。」
初めてレッスンにいらっしゃったサックス吹きの生徒さんは、ご自分の手を見つめながらそんな風におっしゃいました。
「そうですねぇ。私も昔はよくそんな風に生徒さんに言ってしまってましたけど…いろいろ反省点もあります。」
私はそう受け応えをしつつ、その生徒さんの見つめる手の動きを観察していました。
木管楽器や、ピアノを始めとした鍵盤楽器を学ぶ上で「指の動き」については様々なセオリーを耳にすると思います。
それらすべてにもちろん意味があるものだと思いますが、時に形式的だったり形骸化していて、それらをうまく受け取れずに無理をしたり躓いてしまったりする方も多いように思います。
今回はそんな「指の動き」についてのレッスンの一コマから。
ある違和感。
アレクサンダー・テクニークの教師になる訓練を受けていた時に、よく先生から聞いた言葉があります。
「生徒さんがレッスン室に入ってきたその瞬間からレッスンは始まる。」
生徒さんがレッスン室にいらっしゃったその時から、生徒さんの動きを観察しましょうということなのですが、この教えは自分が教えるときにとても役立っています。(あ、生徒の皆さん、次回も普通に入ってきてくださいね…汗)
この日も、お話をされる生徒さんの手の動きを見て、少しの違和感を感じていました。
人の思考と身体の動きとは本当によく関係しているもので、話していることや考えていることに身体は必ず反応します。
実際に楽器を演奏するところを拝見したところ、やはり話している時と同じ指の使い方をされているようでした。
「吹いている時、指の第三関節(指先から3番目の関節)についてはどう考えてますか?」
「そうそう、そこなんですよね。丸くしよう、とか指を立てよう、とか思ってるんですけど、なかなかそこが言うこと聞かなくて。」
「うんうん。丸くとか立てるとかはちょっと置いといて、指のつながりを見てみましょうか。」
この方は指を動かす時、第一関節と第二関節(指先から1番目および2番目の関節)はしっかり曲げているのですが、第三関節はそれに比べるとまっすぐなまま動かしていらっしゃいました。第三関節から手の甲あたりで、力の伝わりがうまく繋がっていない状態のようです。
指を動かすことで音を変える楽器の場合、指のタスクは「思ったとおりに”繊細に”動くこと」です。
身体の末端にある指に繊細に動いてもらうため、まずは指と身体の繋がりを一緒に見てみることにしました。
繋がりを知る。
まずは手指の構造。
指の骨は手のひらの中でもそれぞれ分かれていますね。
次に腕の骨格と、軸の骨格の繋がり。
鎖骨や肩甲骨も、腕の骨格です。
(ここでは骨格の画像のみご紹介していますが、実際は立体模型を使い、筋肉の繋がりなどもご説明しています。)
筋肉も骨格も、すべては繋がり合い、関連し合っています。
思ったとおり繊細に指に動いてもらうには、軸からの力を無理なく指先に伝えるために、それらが微細に連携してくれることが大切です。
このように骨格の画像を眺めてから、実際に身体を動かしてみるのも多少の違いがあると思います。
意識的な練習。建設的な努力。
「こうして全体の繋がりを考えると、なんだか脳と指先が近くなった気がしますね。手や指のことばかり考えてましたけど。”急がば回れ”って感じです。」
「手の形、最初より全体に緩やかに丸くなってますよ。」
「はー。本当だ。」
ここでは簡単に解決の道筋がついたように見えますが、大切なのはここからです。
習慣的な動きは、長い間培って獲得してきたものなので、とても根強いものです。
これをこの新しい動きに置き換えるには、意識的な練習が根気強く必要になります。
アスリートが、自分のフォームの癖を変えるのに長い時間をかけるのと同じように。
・・・そんなことをお話しして、レッスンを終えました。
努力は、やはり大切だと思います。
同時に、その努力の”方向性”も。
このように身体や思考の構造に沿った建設的な努力は、必ず私たちの願いに応えてくれるものだと思っています。
・・・この先もまだまだ、学んでいきたいと思います。
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