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「右手の親指が痛くて……。」


クラリネットをはじめ、オーボエやサックスを演奏される方から多く寄せられるお悩みのひとつです。

それぞれの楽器によって右手親指の役割は微妙に異なるものですし、同じ親指の痛みであっても、起こっていることはその人その人により実に様々です。

今回は、親指や手腕の構造、そしてそれらの特徴から、右手の親指の使い方について改めて考えてみたいと思います。


手は外部の脳

「手は外部の脳である」とは、ドイツの哲学者カント(1724-1804)による言葉だそうですが、他にも「手は第二の脳」と呼ばれたりします。

確かに私たちは、鞄の中から手探りで財布やスマホを探し当てることができますし、何より音階や複雑なフレーズなどは、たくさん練習を重ねることである程度指が覚えてくれますね。(ありがたや……)

事実、感覚や運動及び精神活動の中枢である大脳皮質の中の多くの割合(約30%)が手指のはたらきに関係しているそうです。


出典画像:Wikipedia Commons

例えば今これを読みながら、「自分がいつも演奏している楽器を持つ」とイメージしてみると、どうでしょう。
手や指、または腕の筋肉が反応したり、その感覚を容易に思い出せるのではないでしょうか。

そう、私たちの手指は「使う物の形や重さ、必要な動きを覚えていてくれる」のです。



親指や手の構造から考える

実に優秀な私たちの「手」ですが、親指の痛みを訴える方の多くに

「楽器を持つ前から手が楽器の形を作っている=楽器を持つ前から手の力を使っている」

という動きが見られます。

前述したとおり、これは楽器などの道具を使うために当たり前のことではありますが、痛みのある方はぜひこの先も読み進めてみてください。

まずは親指の構造について。

親指は、他の指に比べて骨がひとつ少なく短いのですが、大変自由度が高い指でもあります。
他の指に対して向き合う構造のため、物を握ったり、持ったりすることができます。

親指の始まり(付け根)は、指として分かれて見える部分からと思いがちですが(図の青い丸)、骨はもう少し手首側へ続いています。……触ってみると分かりますね。
親指の始まり(付け根)は、このように手首近くにある、と言うこともできます。(図のピンクの丸)
そして、親指はこの手首近くの関節から大きく動かすことができます。
(他の指も同じように手首近くに関節がありますが、親指のように大きく動かすことは難しいです。)


(画像:Visible Body)



そして、手指にはたくさんの小さな骨と筋肉があり、「物の形にしなやかに沿わせて、さまざまなコントロールができる」という機能があります。

またそれに続く腕は、前腕、上腕、そして鎖骨と肩甲骨と繋がり、胴体(肋骨)の上に浮かぶような構造をしています。


(画像:Visible Body)

……これを踏まえて楽器を構えてみましょう。



1、まずは膝の上や左手で楽器を支え、右手を楽器から離して、右手の様子をただ観察してみてください。「楽器を持つ」と思うと、どのような反応をするでしょうか?

2、次に、指先から手を動かし、楽器に近付いていきます。このとき「小指側から楽器に触れてみる」と考えてみるのもおすすめです。

3、指先が楽器に触れたら、「楽器の形が手の形を決めてくれる」と思いつつ、ゆっくりといつものところに指を置いていきます。このときに、楽器が直接触れているところだけでなく、前述した「親指の本来の長さ」「手の全体、前腕、上腕および鎖骨と肩甲骨を含めた腕全体の骨格と、胴体の繋がり」を思い出してみてください。

4、そして、それら全てで楽器の重さをゆっくりと受け止めながら構えてみます。
そのまま演奏してみても構いません。


……いかがでしょうか。


構造と、全体との繋がりを思い出す

手は多才ですね。親指は短いですが、さらに多才です。
オーボエやクラリネット、サクソフォンなどの楽器を演奏する際、右手の親指には楽器を支えることや、他の指が繊細に動くことを助けるといった多くの役割があります。

これには、なかなか微細なバランス調整が必要です。
ぐっと握ってしまっては他の指に影響がありますし、グラグラでは楽器が安定しません。

親指をはじめ指全体の構造や、腕全体の構造、胴体との繋がりを理解することで、少しでも親指の負担を減らすことができれば幸いです。


注※感覚や元々の症状には個人差がありますし、文章での説明には限界があるので(文章力の問題……)、何も変化が無い方もいるかもしれません……大変申し訳ありません。よろしければぜひ一度レッスンへお越しください。


参考文献:小学館「大辞泉」、岩村吉晃「ヒト触覚受容器の構造と特性」

 


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