舌の手術と、入院。
『このブログは2015年8月23日に、旧ブログに投稿したものを原文のまま転載したものです。』
2015年、夏。
舌の病気の手術のため、入院することに。
病気のため舌を切除するのはこれで3度目になる。場所はいつも同じところ。舌の左側縁部。
前回までと大きく異なるのは、局所麻酔では無く全身麻酔になることと、傷口を縫わずに人工粘膜での処置を行なうということだった。
全身麻酔を使うのは、今回は舌をものすごーーく引っ張って手術するため、全身麻酔のほうが楽だろうということ。
人工粘膜を使うのは、切除する部分が広いため、縫ってしまうと舌が引っ張られてかなりの違和感が残るためだとか。
このことで起こるデメリットは、全身麻酔の一般的な副作用(鼻から肺まで挿管するため術後に喉の痛みや痰が出やすいということや吐き気、全身への負担)と、人工粘膜を使うと術後1週間ほどは口から食べ物を摂取できないので、鼻から胃まで管を通して栄養を摂るということだった。
『全身麻酔はともかく、1週間口から食べられないって…(´Д` ) ワタシ耐えられるんかな…?(´Д` )』
…一番の懸念はそこなのだった(笑)
手術の前日の朝から入院。
「翌日0時から絶飲食ですからね!( •̀ .̫ •́ )✧」とのことだったので、夕食を食べてから病院内のコンビニでカフェラテとメロンパンを買い食いする(笑)。
「これから1週間食べられないのかぁ…想像つかないなぁ。さよならカフェラテ、さよならメロンパン…。・゜・(ノД`)・゜・。」
当日は早朝からバタバタと注射をされたり血を抜かれたり、血栓予防のための医療用ストッキング(←キツくて不快)を履かされたり、手術着に着替えたり(←寒い)。あっという間に手術室に移動する時間になり、看護婦さんたちにベッドで連れて行ってもらう。(歩いて行けるのにな、と毎回思うのだけど。脱走防止?w)
ヒト型の手術用ベッド(←コワイ)に横たわるとテキパキと色んな器具を付けられて、手の甲に点滴を刺される(←イタイ)。麻酔医の先生が私の顔を覗き込んで「じゃあマスクしますね~」と私の鼻と口に麻酔のマスクを当ててくれるんだけど…『い、イタイ‼︎ そんなに押し付けなきゃいけないの⁉︎ イタイってば‼︎(怒)』とキレそうになっているうちに意識が無くなる。
…「終わりましたよ~起きてくださーい」
…『う、うるさい…眠いんだけど(怒)…あぁ、手術終わったんだ。』…「あ、ハイ。」
「鼻の管、抜きますからねー。」
この瞬間「術後、鼻からの挿管を抜く時にちょっと苦しいから頑張ってくださいね」と術前に聞いていたことを思い出し、「頭が動けて身体全体がそれについてきて…」と咄嗟にアレクサンダー・テクニークを使えた自分にちょっと感心した(笑)。
病室に戻ってからは、とにかく痰による息苦しさと激しい喉の痛みと吐き気。口から痰を出せないので、鼻をかもうとするんだけど、何故か上手くかめない。
舌はどういうわけか痛くないので、ばしばしナースコールをしてメイワクな患者になる。
「気持ち悪いです」
「暑いです」
「ノド痛いです」
「トイレ行きたいです」
喋ると吐きそうになるんだけど、「術後、元通り話せるようになるには慣れが要りますよ」と言われていたので、何とかちゃんと喋れることが嬉しかった。
何時間かして、ひとりでトイレに行けるようになったついでに恐る恐る口の中を覗いてみると、舌の半分が青緑色の粘膜で覆われていて、まるでエイリアンみたいだった(´Д` )。
翌日は、水以外は絶飲食。翌々日に鼻からの栄養が始まったが…これが想像以上にキツかった。食事のたびに管を抜いたり入れたりするのでなく、ずっと通ったままになるんだけど、とにかく常に気持ち悪い。たびたびノドの中で管の居所が悪くなっては、むせまくっていた。
鼻からの栄養は1日3回。「お食事ですよ( ´ ▽ ` )♪」と看護婦さんが持ってきてくださるんだけど、匂いも味もない。ただ胃だけがダイレクトに膨れる、不思議な感じ。
同じ病室の方たちのお箸やスプーンの音が羨ましくて、鬱になりそうになった(笑)。
…そしてノドの痛みはいっこうに治まらず、痛み止めが切れると舌も激しく痛む日々が続く。
そんな中、アレクサンダー・テクニークはとても役立ってくれた。
気持ちが落ち込みそうになることに気づくたび、痛みで目が醒めるたび、鼻管でむせたりするたびに、「頭が動けて身体全部がそれについてきて」いま自分が置かれている状況、状態について意識的に建設的に考え、その時の最大限の穏やかさや、協調状態を取り戻すことができたのだった。
(余談。舌がすごく痛む時は、背中のほうまで痛みが広がっていたのだけど、「あぁ、舌の筋肉は舌骨を介して肩甲骨まで繋がっていたんだっけ。よしよし、そこは緩んでいいんだよ。」と思ってみると、背中の痛みは無くなり、舌も動かしやすくなったり。あぁ便利w)
術後6日目。やっと鼻管を抜くことができ、その足でジュースを買いに行く(笑)。
…お、おいしい…。・゜・(ノД`)・゜・。
脳からいろんな幸せホルモンがびゅーびゅー出るのが分かった気がした。
早速食事が出るも、とにかく咀嚼して嚥下するまでにものすごい時間がかかる。舌の左側は感覚が無く、味も分からない。
食べるということに、こんなにも舌は複雑な活動をしてくれていたのか。…ありがとよ。
一食食べ終えるのに小一時間くらいかかりながらも、口から食べられることがとても幸せだった。
術後7日目に無事退院。
その後少しずつ痛みも治まって、いまはすっかり仕事にも復帰し、楽器の調子も少しずつ戻りつつある。
舌の違和感がどれくらい残るかはまだ分からないけど、何とか元どおり吹けるようになるかな。。
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…この先は、少し躊躇いもあるけど。
みなさまのお役に立てることもあるかもしれないので書いてみます。
退院する少し前の診察でのこと。
「手術で取ったところの検査結果が出たんだけどね。」
先生はいつもより少し私に近づきながら仰った。
「ガンだったよ。悪性。」
頭が真っ白になる、というのではなく、血が逆流するというか、身体が熱くなる感じがしたのを覚えている。
その時は、自分の「引きの悪さ」に何だかとことん呆れた気がした。病気は人を選ばないということも、充分分かっていたけれど。
(°_°)←こんな顔になっている私に、先生は優しくこう続けた。「幸い、今回の手術で悪いところは取りきれていて、追加の手術などは必要ないです。今後は細かな経過観察を必ず続けましょう。」
…少しホッとした。
私の病気は元々は「白板症」というもので、それ自体は痛みもなく、放っておいても良いのだけど、何%の割合でガン化する「前癌病変」というものだった。今回も、悪いものでは無さそうだけど、取っておいたほうが良いということで手術したのだった。
職業上、場所が場所だけに、また手術することにとても躊躇いがあったのだけど、前向きに決断した自分を今はとりあえず褒めたい。
そして、手術することを決めた後にも不安定だった自分に「あなたは『治癒』に向かっているのよ」という素晴らしい”yesプラン”をくださったキャシー・マデン先生はじめ、多くの支えと励ましをくださったATの先生方、トレーニー仲間の皆さん、愛する友人たちに改めて感謝申し上げます。
この出来事を境に、私にとって「時間」というものが持つ意味が、少し変わったように思います。(…やってることはほとんど変わってないけどね( ̄▽ ̄))
が、それでも私は今後も変わりなく、日々楽しく過ごして行きたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
今日も充実した1日を過ごせたことに感謝。
ここまでお読みいただき、ありがとうございましたm(_ _)m
2015年8月23日
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