「喉の力み」の意外な原因。
サックスの生徒さんとのレッスンで。
「喉が力んでる感じがするんです。ツラいし、音にも影響してると思うんですが・・・」
よくあるお悩みですが、起こっていることは一人一人異なるものなので、まずは丁寧にお話を伺うことにしました。
「喉ですね…。痛くなってしまうとか、吹くことそのものに何か弊害はありますか?」
「いや、”痛い”というほどではないんですけど、どちらかというと不快ではありますね。響きもつまるような気がして。」
「そうですか。…ところでそれは”喉”のどの辺ですか?」
解剖図を見ていただきながら演奏していただき、じっくり観察していきます。
「あ、この辺ですね。多分。」
(絵のクオリティには触れないでクダサイ・・・)
口の天井部分、「軟口蓋」と呼ばれる柔らかい部分の辺りのようです。
ご自分でも観察を続けていただきながら、私も観察を続けていると、ある一つのわずかな動きに気づきました。
マウスピースが口に入り、アンブシュアが整う、その最後の最後。
頭と首が全体に、マウスピースの方向に「カクッ」と動くのです。
私もサクソフォン奏者なので、この動きが「上の歯をマウスピースに当てる動き」ということは理解しています。しかし。
「上の歯を、マウスピースにどれくらい当てていますか? どう考えていますか?」
「えっ…どうかな…あぁ、しっかり当ててますね。頭の重みをしっかり乗せようとしてます。」
「上の歯はマウスピースにしっかりつける」
「マウスピースに頭蓋骨の重みを乗せる」
これは、サックスを初めて吹く方にアドバイスする言葉として、よく聞かれる言葉です。
初めのうちはアンブシュアが不安定なので、まずはしっかり場所を覚えて安定して音が出るようにするためにそのように伝えることは多いと思います。
しかしこの方は、サックスを始めて10年以上のキャリアをお持ちです。
「ちょっと、いろいろ遊んでみませんか?上の歯を軽く当ててみたり、強く当ててみたり、あるいは可能ならマウスピースから離してしまってください。」
「へー、離す。できるかな…」
音色と響きが、どんどん変化していきます。
「えっ・・・。」
「すごくラクです・・・。ていうか、ちょっとショックです。最初のタンギングも綺麗にできるし。どうして今まで気づかなかったんだろう。」
とても良い結果に結びついたようですが、なんだか落胆されてしまいました。
マウスピースの部分はリード側と違って弾力がないので、どんなにしっかり歯が当たっても楽器側に影響はないものと思われます。
しかし、人間の体は繋がりあっているので、ここにグッと力が入ると口の天井部分の硬いところから、その奥の柔らかいところまで影響が及びます。(試しに上の前歯に何かを当て、下から上に強く押し当ててみてください)
それが原因で響きや、細かなコントロールにも影響があったのだと思われます。
「…最初に習ったことって、ずっと残ってるものなんですね。でも自分が何に捉われてるかに気づくことができて良かったです!」
ちょっと復活されたようです(ホッ。)
上の歯を、どれくらいマウスピースに当てるか。
しっかり当てることも選べるし、ふわっとマウスピースから浮かすこともできる。
この新たな選択肢を、より自由に取り入れられるよう、最後に一つの動きを提案しました。
「マウスピースと上の歯の当たり具合を調節するときに、この辺りの高さから頭を傾けることができると思ってみてください。」(写真参照。この高さに頭と脊椎をつなぐ関節があります。)
「あっ!すごく軽く動きますね!今までどうやってたっけ?」
今までどうやっていたかは置いておいて、新しい動きでぜひ練習してみてくださいとお伝えしてレッスンを終えました。
この生徒さんがおっしゃる通り、「最初の頃に習ったこと」はとても深いところで覚えているもので、日頃は意識下にあることが多く気づかないことも多いです。
このレッスンは、そんな「無意識な動き」に自ら気づき、新しい選択肢を選ぶことで、また新たな一歩を歩み出せることが大きな魅力の一つだと思っています。
私自身も、まだまだ探求中です。
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フルート奏者でアレクサンダー・テクニーク教師の嶋村順子さんと共催するスクール「セルフ・クエスト・ラボ」では、継続的なグループレッスンを始めアレクサンダー・テクニーク教師養成コースも開設しています。詳しくは下記サイトをぜひご覧ください!
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