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  練習の目的の一環に「成功確率を上げる」というものが挙げられると思います。

「速くて複雑なフレーズを正確に演奏する」
「高音や低音、またそれへの跳躍など、難易度の高い音を思い通りに発音する」・・・

時間の芸術である音楽演奏の上で、「その時、その場、その流れの中で」これらをイメージ通りに成功させるために、私たち音楽家は気の遠くなるような時間を費やして練習しているわけですが、どんなに時間をかけ、情熱を傾けても、何だかそれが”空回り”して、なかなか出口が見えず悶絶する日々のほうが、私は多かった気がしています。(今も…)

今回はそんな「成功確率を上げる」ということについて。  

 

“つい繰り返してしまう”魔力。

「間違えるのは、練習が足りないから。」
「不安なのは、練習が足りてないから。」

練習の”量”は、その”質”とともに必要なものです。しかし、上記のような単純な言葉で表現できるものでも決してありません。

一つの困難な事象に対して、そこでその人に起こっていることは実に複雑で、その解決に向けてはそれぞれに細かな観察と分析が必要になってきます。

しかし私たち音楽家は、「できないところ」に対して無意識に何度も繰り返すという習慣を持っていることが非常に多いです。

この「繰り返しグセ」は本当に根強いもので、目の前で何度も繰り返そうとする生徒さん(あるいは自分自身)にストップをかけるのには、なかなかのエネルギーが必要になるほどです。

練習”量”は大事です。回数をこなして「体に覚えてもらう」ことは必要です。

しかしこの”つい無意識に繰り返してしまう”という習慣には、とても強い魔力があります。

それはたとえ「できていても」「できていなくても」、繰り返すことで私たちはある種の「安心感」を得るからです。

そしてそれは、なかなかに手放しがたいものです。

 

“失敗する”を練習する…。

「今、どうしてそんなに何度も繰り返したんですか?」

「え?私、繰り返してましたか?」

レッスン中によくあるやり取りです。驚くほど無意識なものなのです。

「この感覚を覚えようとして…」とおっしゃる生徒さんもいらっしゃいますが、感覚というのは残念ながら”覚える”ということにあまり向いていません。

ここで注意したいのはその反復が「うまくいくため」のものであるかどうか。
そして「何をどのようにして反復しようとしているか」について明確で意識的であるかどうか。

同じ練習を繰り返す=学習することで、神経の伝達速度は上がります。(過去記事「”練習はなぜ必要か」参照。)

しかし、ここでちょっと勇気を出して書くと、ただ闇雲に繰り返すのは「失敗すること」を何度も練習することに繋がりかねません。

 

「確認」を手放す。

・・・。

(言葉は鏡ですね。自分で書いておいて、自分が今ダメージを受けています(笑)。)

「ただ繰り返すこと」は本当に強い魔力を持っています。

「できているか。」「私は大丈夫か。」そんな「確認」をして安心感を得るために、無数の反復をすることも多いのではないでしょうか。(そして「ハマる」という現象に突入したり…。)

成功するためにはその「条件」が揃っている必要があると思います。逆に、それらが揃っていれば成功するとも言えます。

出そうとする音、フレーズを音楽の中でどのように捉えているか。
その音、フレーズができるには、何が起こる必要があるか。
それを自分のどこでどのようにコントロールできるのか。

反復練習とは、いつも上記のことについてその都度考え、その都度実験し、その都度検証するものだと思っています。

今、何を考え、どう動いたからこのような結果になったのか。ではこの次はどう考え、どうするのか。

 

そういう”繰り返し”ならば、私たちは「成功した」「失敗した」に捉われることなく、ただ「音楽の表現の真ん中」に佇まい続けることができるのではないかと考えています。

 

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