舌は変体する。
タンギングをはじめとして、音色や響き、息の圧力のコントロールなど、管楽器奏者にとって「舌」の持つ役割は大きく、また多岐にわたるもの。
「見えそうで見えない」部分であるからこそ、その使い方については様々な表現の仕方があるもので……ゆえに実に悩ましいものでもあります。
他の人が一体どうやっているのか、また自分の舌が普通より長いのか、短いのか、分厚いのか…など、先天的なことについて考えてみることがあったとしても、実際はなかなか他の人と比べられるものでもありません。
今日はそんな「舌」について考えてみます。
そもそも「舌」ってどこまで?
「舌」と聞いて、イメージする部分は人によって様々だと思います。
果たして、どこからどこまでが「舌」なのやら。。。ちょっと調べてみました。
舌とはそもそも「色々な方向を走る発達した筋肉で出来ていて、形を自由に変形でき、非常に複雑な運動ができる器官」だそうで。
そして舌の筋肉には「外舌筋」と「内舌筋」の2種類があり、
- 「外舌筋」は舌の位置を前後、左右、上下に大きく動かす作用をし、
- 「内舌筋」は舌を小さく縮ませたり、平たく広がったりなど舌の形を変化させる作用をする。
…とのことです。
参考の画像はこちら。
ちょっと色分けしてみましたが…多くの方が青い部分だけを「舌」だと思っていたのではないでしょうか。(私もです)
よく見ると、上あごや下あご、頭蓋骨につながるものもあるようですね。
いわゆる青い「舌」の部分は舌の形を変化させ、赤い「舌」の部分は舌の位置そのものを変化させるようです。面白い。。
このように実際の舌の構造に触れてみるだけでも、タンギングなど楽器を吹くときの舌の動きに新たなバリエーションが加わりそうです。
「舌」の役割
さて、その「舌」の役割といえば、
- 咀嚼や嚥下といった「食べるため」の運動の補助
- 「言葉を話すため」の構音器官としての役割
- 味覚を感じる役割
この3つが挙げられます。
ここでややこしいのが、この「食べるため」の動きも「話すため」の動きも、いずれも、
口輪筋や頬筋など「表情を動かす筋肉」の動きと、咬筋や翼突筋など「顎を動かす筋肉」の動きが複雑に連動して起こるところです。
管楽器奏者としては、「舌の動き」「表情筋の動き」「顎の動き」といった、連動するこれら3つの動きを、日頃から繊細に観察しておきたいものです。
楽器を吹くときの「舌」は特別か
さて、これらの動きを応用して私たちは楽器を吹くわけですが、卓越したプレイヤーが軽々とやっているような「ものすごい動き」を、果たして自分ができるのか…途方に暮れることもあります。
ここでちょっとしたエピソードがあるので、最後にご紹介しておきます。
私は数年前に舌の病気のため舌の一部を切除する手術を受けました。
まぁそれはそれは痛くて、術後1ヶ月ほどは痛みが取れずに薬を飲み続ける毎日で、特に食事するときにものすごく痛かったんです。
術後1週間後から食事ができたんですが…噛めない&飲み込めない(笑)。顎は何ともないはずなのに、おかしな感じでした。
退院してからすぐ、不安のなか楽器を吹いてみたんですが…これが不思議。普通に吹けたんですよね。(痛いけど)
タンギングも、ダブルタンギングも、フラジオも、ポルタメントも、(痛いけど)問題なくできたのでした。食べることにはその時かなり困難があったのに、です。
そこで食べるときの舌の動きを細かく観察することにしたのですが…まぁその動きの素晴らしいポテンシャルと言ったら(笑)。普段は味わうのに必死で、全く気付きませんでした。
そこから学んだことは、結論から言うと、ご飯を上手に食べられるなら楽器を吹くときの舌の動き自体はそれほど「特別なものではない」ということです。
日常の舌の動きを幅広く繊細に丁寧に観察して、楽器を吹くことに生かしていきたいものですね。
ちなみに今回は舌の筋肉そのもののお話でしたが、「舌骨」につながる筋肉はもっとたくさんあります。。↓
(画像:Visible Body)
なんだか肩甲骨にピョーンと長く繋がってるのもありますね…あぁ複雑。。。
この辺りは、また別の機会に。
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