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2015年の夏。

私は舌腫瘍の手術を受けました。

その後の組織検査の結果、初期の舌癌であることが分かり、現在も経過観察を続けています。

下記の文章は2017年春、これまで拠点としていた名古屋から上京した頃に書いたものです。

 

私たちは日常の中で、様々な”恐怖”を感じるシーンが多々あるかと思います。

私たちは不意に訪れるそれらを前にして、どう考え、どう対処していくことができるのか。

そんなことについて少し考えてみました。

 

恐怖の裏側=生きたいという強い望み

 

関東に引越して来たことで、これまで経過観察のために通っていた病院も転院することに。

新しい主治医の先生から
「PET-CT検査は今までされてないんですか?」
と聞かれて、
「…(何じゃそりゃ)。いや、普通のCTだけですけど…。」
と答えると、
「遠隔転移をしやすいということはご存知だと思います。一度ぜひ検査してみましょうね。ここでは設備がないので、ちょっと横浜のほうまで足を伸ばしていただくことになりますが…。少々高額ですけど、保険効きますのでね。」
「…(高額(°▽°)⁈ マジすかー⁈)。あの、おいくらくらいかかるものなんでしょうか…?」
「3万円くらいですねー(^ ^)。でも自費だと10万円超えますからねー(^ ^)。」
「…!!(゚Д゚ノ)ノ 。。わ、分かりました…。」

 

保険が適用になるには理由が要るということで、検査の書類に先生が
「転移の疑い」
と書かれたのを見たときは、やっぱりちょっと胸が重苦しくなった。

 

PET検査とは、簡単に言うといわゆるガンの検査で、全身(脳以外)のガン細胞を比較的簡単に早期に発見することができる検査だということだった。

 

後日、電車を乗り継いで横浜へ。
検査に必要な薬品を点滴してもらって、1時間ほど安静にしていると、いよいよ検査室へ。

 

…不自然なほど広い部屋に、大きな筒状の白い機械が置かれている。
若い女性の技師さんに、その機械に横たわるよう促されると、腕と胴体をグルリと大きな布で固定された。

 

「動かないでじっとしていてくださいね。15分ほどで終わりますので。」

…。
……。

白い筒の中を、少しずつベッドが移動していく。

………。

……もうそろそろ終わりかなぁと思ったころ。

 

「検査時間はあと10分です」

冷たい声がマイクを通して響く。

『…あと10分?まだ3分の1しか終わってないの?』

そのたったの10分が、私には永遠の時間のように感じられた。

 

見知らぬ場所。
初めての病院。
無機質で不自然に広い部屋。
得体の知れない大きな機械。
耳障りなモーター音。

 

筒の中はそんなに狭くないはずなのに、すごく狭く息苦しく感じて、どんどん手足が冷たくなっていく。

刹那。

「…コレデ転移ガ見ツカッタラ、私ハドウナルンダロウ…」
まだ起こってもない、ありもしない恐怖が、深淵の闇のように私を取り囲む。

 

ここに来て、
やっと掴みかけたもの。
たどり着いた場所。
そんな大切なものが、指の間から次々とこぼれ落ちていくように感じて、
私は思わず、事前に渡されていた、検査を中止するボタンを押してしまった。

 

「…どうしました?大丈夫ですか?」
制御室から技師さんが出て来て、心配そうに私を覗き込む。
「…あ、ごめんなさい。大丈夫です…。」
「このまま中止してしまうと、検査を最初からやり直すことになりますが…。」
「いえ、大丈夫です。ごめんなさい。続けてください。」

 

そこでやっと我に帰り、自分がアレクサンダー教師であることを思い出して(←遅いw)からは、落ち着いて検査を続けることができたのだった。

 

家に戻ってから、ひとり『検査止めちゃって、技師さんに迷惑をかけちゃったなぁ。。』とブツブツと反省しつつ、ここはアレクサンダー教師らしく(←遅いww)、その
「得体の知れない恐怖」
が何だったのかをもう少しクリアにしてみることにした。

 

私のその恐怖は、シンプルに言えば「死への恐怖」と「それに伴うあらゆる意味での苦痛への恐怖」だったと思う。

 

そしてそれはまた裏側から見れば、
「生きたいという強い望み」
「自分がやりたいと思うことに、いつでも取り組むことができる自由さを持っていたいという強い願い」
とも言えるだろう。

 

思考は選べる。

 

練習は必要だけど、いま自分が「裏側」としていることを「表側」にすることもできる。

…次に検査を受けるときは、「自分にとっての本当の表側」を考えて臨みたい。(←遅い…w)

 

まだまだです。

 

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