ストラップと首と腕と私。〜”構える”というプロセス〜
ストラップと身体の関係。
サックス吹きにとって、大切な相棒「ストラップ」。
腕や指に過度の負担をかけずに楽器をサポートしてくれる、大切な存在。
つい首から下げているのを忘れてそのまま家に帰っちゃったりするくらい、空気のような存在。
基本的にはネックレスのように首にかけるものですが、最近は首にかかる負担を考慮したデザインのものも多数出てますね。
首には吸気を補助するたくさんの筋肉や、舌骨につながる筋肉も幾つかあるので、とても喜ばしいことです。
舌骨につながる筋肉↓
首にある、吸気を補助する筋肉↓
たくさんあるんですね。。
さて、「楽器をストラップにかける」そのとき、どんなふうにかけてますか?
サックスは、楽器の種類や吹く人の体格にもよりますが、なかなか重いものです。(バリトンならなおさら。)
でも楽器を吹くことが日常になってくると、つい「楽器をストラップにかけている」ことに無意識になり、
楽器の重みに体が連れていかれてサックス特有の不自然な姿勢に繋がっていったりします。
(…これを書いている私自身がかなり無意識でした。実際、椎間板が全体に右にズレているそうです。。)
楽器の重みはストラップから首または肩へかかり、
背骨を伝わって骨盤へ行き、
座っている場合は椅子の座面をとおして椅子の脚へ落ち、床へ落ちて地球に落ちて行きます(笑)。
立っている場合は骨盤から2本の脚を伝わって足の裏に行き、床へ落ちて…。
そんなふうにして、私たちは楽器を支え、そして吹くことができます。
楽器をストラップにかける時、または構える時に一度、
自分の首や肩、また背骨全体や骨盤、脚など自分自身の全体に向けて
「今から楽器を支えるよ!」と言ってあげてみてください。
そして上記のように楽器の重みが下へ落ちていくことを意識しながらも、
「自分自身は重力に反して立ち、または座っていること」を意識して、音を出してみてください。
…いかがでしょうか。
腕と呼吸の関係。
さて、続いて腕について。
腕。
腕の「付け根」ってどこでしょうか?
腕の「付け根」、腕の骨格的な始まりはココです↓
この、鎖骨と胸骨(胸の真ん中にある扁平な骨)の関節(「胸鎖関節」といいます。)のところが腕の始まりです。
試しに、肩のあたりを腕の始まりだと思って腕を動かすのと、胸鎖関節のところが腕の始まりだと思って腕を動かすのを比べてみてください。
…いかがですか?少し違いがありましたでしょうか。
そして、「腕の構造」にはいわゆる手や前腕、上腕だけでなく、上記画像にある鎖骨と肩甲骨も含まれます。
そしてこれら「腕」の骨格やそれを動かす筋肉は、私たちにとって大切な大切な「肺」が入っている「胸郭」の上に浮くようにして乗っかっています。
そう、腕は胴体の上に「浮いている」とも考えることができます。
サックスという楽器はストラップのおかげで、他のほとんどの管楽器に比べてさほど腕の力を使う必要がありません。
…そこが、逆に落とし穴のようです。
私は、指をスムーズに楽に動かそうと、腕全体をできるだけ「脱力」しようとしていました。。
そうすると…4~5kgはあると言われている腕の重みが、全てでは無いにしろ胸郭にかかり、そこを圧迫してしまう形になります。
事実、私はアレクサンダーテクニークのレッスンの中で
「腕を固めていると、胸郭も固まってしまって、息が入りづらくなるよー。」
と何度か指摘されました。
そもそも腕は、前述した胸鎖関節でしか体幹とつながっておらず、とても可動域が大きいところ。
…かといって常にずっと楽器を持ち上げ続けたり(←これは楽器の種類や体格にもよりますが)、腕を動かしまくって吹く、というのではなく、
「腕は胸郭の上に「浮いて」いて、鎖骨のあたりから自由に動けるんだなぁ。」
と思いながら楽器を構えて、吹いてみてください。
そうすると、腕の筋肉に適切な”ハリ”が生まれ、呼吸もしやすく、指も動かしやすくなるかと思います。
…いかがでしょうか。
構えるというプロセスで考える、ストラップの適切な長さ。
最後はストラップの適切な長さのお話。
「ストラップって、どのくらいの長さにしたらいいのか…イマイチしっくりこないのよね。。」
…なんてお悩みの方も多いかと思います。
アレクサンダー・テクニークのレッスンを受け始めた当初、私は音を出す以前の、ただ楽器を構えた段階でよくストップをかけられました。
サックスを吹き始めて◯○年、これにはかなり凹みました。。
『楽器を自分に合わせる』
『楽器を自分のところに持ってくる』
楽器のところに自分が行くのではなく、自分にストラップの高さ、ネックの角度、マウスピースの角度を合わせる。
…これって、初心者に必ず教えることですね。
…自分は、ちゃんとそうしているつもりでした。
……でも、してなかったんですよ。。
楽器を持って立ち(または座り)、自分の口にマウスピースが入るようにストラップの高さやネックなどの角度を調整し、腕を使って楽器を口元へ運び(注※この時、すでに下唇を巻き込み、口を開けている)…
……。
そう。その最後の最後、マウスピースが口にやって来るその「寸前に」、自分からマウスピースを咥えに行っていたのです。
「ちょっとストップ!いま、何したの?どうやってた?」
「え? え? 何もしてません…」
アレクサンダー・テクニークの先生にそんな風に問いかけられても、最終的に自分がどう動いて楽器を構えたのか、その時はちっとも分かりませんでした。
完全に無意識の中の、些細な些細な動きでした。
楽器が口に入る前にアンブシュアを準備し、腕によって楽器を口に運びきる前に自分から咥えに行ってしまう。
とてもとてもとても些細なことで、どうでもいいような気がしますが、こんな「習慣」が思わぬ不調や不具合を運んでくるようです。
さて、実験してみませんか?
まず、このブログの内容の全体を辿ります。
…楽器をストラップにかける時、または構える時に一度、自分の首や肩、また背骨や骨盤、脚など自分自身の全体に向けて「今から楽器を支えるよ!」と言ってあげてみてください。
…そして楽器の重みが下へ落ちていくことを意識しながらも、「自分自身は重力に反して立ち、または座っていること」を意識してみてください。
…「腕は胸郭の上に「浮いて」いて、鎖骨のあたりから自由に動けるんだなぁ。」と思いながら、
…腕で楽器を口に運びます。マウスピースが口にやって来るまで、どうか待ってあげてください。
そして、結果マウスピースがもし口にやって来てくれなければ(唇に辿りつかなければ)、ストラップの長さを微調整してください。
…そして、マウスピースが口に「着いた」ら、そこで初めてアンブシュアを作ってみてください。
上の前歯をマウスピースに当てる時は、鼻先がマウスピースに向かうように頭を動かすとシンプルに動けると思います。
それから、音を出してみましょう。
…いかがでしょうか?
いつも何気なく繰り返している動きや、それに伴う部分について改めて思いを馳せることは、
長く楽器を楽しみ、上達し続けることにおいてとても大切なことだと思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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